肝だめし③ | 炎の人生劇場

肝だめし③

~その②のつづき~


いよいよ一行は、病院内へと玄関ホールに足を踏み入れます。

床にはコンクリートの砕けた破片が散乱していました。

外来患者の受付でにぎわっていたであろうホールに、かつての活気は当然無く、不穏な闇だけが支配しています。

僕は恐いというよりも、気持ちが悪い、気分が悪いというのが正直な感想でした。


不規則なロウソクの明かりによって、まるで生き物のように揺らめく建物内の影。

少しでも油断すると、こちらに襲い掛かってきそうです。

と、その時です。



ガタン!!


不意に近くで大きな物音が響きました。

あまりにも、お約束な展開に何人かは思わず悲鳴をあげてしまったようです。

みんなして、(゚ω゚; 彡 ;゚ω゚)な状況でいると、前方に「ニャ~~ン」と何かがノンキな鳴き声を出しながら横切って行きました。



Yちゃん「な、なーんだ、かぁ(;´∀`)」


ネコだ。


どうやら、Yちゃんの混乱は早くもMAXに近づいているようです。

しかし、そんなYちゃんのアホな勘違いに、全員ピクリとも笑いません。

みんなそれぞれ余裕が無いのです。



それから、みんな早足で診察室・食堂などを次々と駆け抜け、2階に続く階段の踊場で、いったん作戦会議が開かれました。

みんなは床のホコリを払うのも忘れ、一斉に力無く腰を下ろしました。


「これからどうする?」

「どうするって・・・。」

「やっぱ・・・行く?」


『行く』が、どこを指しているのかは誰の意識のも明白でした。

今回のブリーフィングにおいて最大の山場、手術室と霊安室です。

はっきり言って1階フロアを回っただけで、すでにみんなの精神状態はマズイ方向に向かっています。


これ以上、恐怖が続けば発狂確定やも知れません。


行くとも行かないとも言わず、みんな押し黙っていると、Yちゃんが突然立ち上がって叫びました。


Yちゃん「よし!!行こうぜ!!(゚▽゚|||)


また始まった・・・('A`)

前回のリベンジを兼ねているYちゃん、無理してヤル気を見せています。

当然みんなは・・・


「おぉ!行ってやるたい!!」

「やったろやんけ!!」

「負けるか!!(何に?)」


ビバ!単細胞。


こんな調子で、いざ出発。

目指すは強敵、手術室。


そしてラスボス、霊安室。


最初の難関、手術室は、2階フロアの中央に位置しています。

みんなロウソクの火を消さないようにゆっくりと、しかし確実に歩を進めます。

ふと気づくと、何やら僕の袖を引っ張る存在が。


Yちゃん、いつのまにか僕のそばでピッタリ張り付いていました。


Yちゃん、一番びびってますやん。('A`)


そんなYちゃんをしっかり警護しながら進んでいると、目の前に両側に開く大きな扉が現れました。

扉の上には、おなじみの『手術中』と書かれた電光プレートがありましてが、『中』の文字が割れて無くなっています。

周囲は物音一つせず、シーンと静まり返っていました。

覚悟を決めた僕ら5人は、覚悟を決めました。


身を寄せ合う男達。


みんなで一緒にドアに手をかけ、合図と同時に開ける手はずです。


「みんな、用意はいいや!?」

「いいぜ!」

「オッケー!!」

Yちゃん「(((( ;゚д゚)))アワワワワ」



『いっせーの・・・せ!!!


みんなほとんど同時に思い切りドアを開きました。

ところが、次の瞬間!!

ドアが開かれた途端、何ともカビ臭いホコリまみれの風が勢いよく僕らの方向へ吹き込み、一瞬にして5本のロウソクの火を消し去ったではありませんか!!











Yちゃん「うぎゃぁぁぁ━(゚Д゚;)━━!!




Yちゃんはとてつもない奇声をあげながら、なんと僕らを置き去りに自分だけ逃げてしまったのです。('A`)

霊に、というより、むしろYちゃんにビビッた僕らも叫びながら、その場を一目散に逃げ出しました。


真っ暗闇の中、所々射し込む月明かりをたよりに必至に玄関ホールを目指しました。

僕が脱出すると、すでにみんなは息を切らし座り込んでいました。


「マジあせったぁ・・・。」

「Yちゃん、シャレにならんって!」

「死ぬかと思ったぁ・・・。」















「で、・・・Yちゃんは?


みんなはその言葉に顔を見合わせます。


「あれ?あいつどこ行った?」

「知らん!」

「車まで戻ったんかなぁ・・・?」


一番に逃げ出したYちゃんが、あまりにも高速だったため、誰一人消息を知る者はいませんでした。

恐らくフェンスを越えて車の所まで戻ったのだろうという事になり、その日の肝だめしはお開きにして、みんなも帰る事にしました。


「ったく・・・自分だけ逃げてから。」

「すごい速さやったな!」

「逃げ足は昔から速いけんねぇー。」


帰りの道すがら、Yちゃんへのヘタレ談義に花が咲きます。

今回のお話はこのへんで~・・・


とはなりません。


やはりというべきか。

笑いの神は、エンディングに最高のサプライズを用意していました。





Yちゃんの見事な逃げっぷりに盛り上がりながら帰っていると、誰かが突然叫びました。


「あ!!あれ見ろ!!」


驚いた様子で前方を指差す仲間の一人に、みんな釣られるように視線を向けると・・・






何か固まりが見えます。


よく見ると、行きがけに道をふさいでいた、あの大木の幹の前で、誰かが倒れています。


みんなは一斉に走り出し、急いでその場に駆けつけました。










正体は、もちろんYちゃんでした。('A`)


両鼻から鼻血を出し、マヌケな顔で気絶しています。

恐らく、逃げる際に全速力でこの大木に追突したと思われ、その表情からも当時の心理状態を容易に推察できます。

仲間の一人が抱きかかえ、Yちゃんのホッペを叩いています。


「おい!しっかりしろ、アホ!」


みんなの心配をよそに、Yちゃんはしばらくするとうつろな様子で意識を取り戻しました。

一同ほっと一安心。


「びっくりさせんなよ~」

「死んどるかと思った。」

「それよりYちゃん、鼻血が出とるぜ。」


その言葉にハッとするYちゃん。


Yちゃん「うぇ~血が乾いてパリパリやん!!」

そう言って笑いながら鼻の下をこすってます。


Yちゃん「鼻血、取れたぁ?」

「どれどれ・・・」


仲間の一人がそう言って、Yちゃんの顔をライターの火で照らしたその時でした!!






















「お、お前・・・歯が無いぜ?


!?


なんと、ライターの小さな明かりに照らされ笑っているYちゃんの前歯がありませんでした。


Yちゃん「え!?ちょ・・ウソ!?マジで!?ウソ!?」




一同笑死



どうやら、追突の代償は鼻血だけではなかったようであります。

その後、笑い転げるみんなをよそに、一人うろたえるYちゃん。




リベンジ失敗。




その後、数年に渡ってYちゃんのアダ名が歯抜け関連だったのは言うまでもありません。('A`)



良い子のみんな!


歯は大切にしよう!(|゚|∀|゚|)





終わり






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