炎の修学旅行①
みなさんは学生の頃の修学旅行にどんな思い出がありますか? すべて泡となって消え去ってしまいました。 ソルジャーの導火線に火を点けてしまったようです。('A`) |
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肝だめし③
~その②のつづき~
いよいよ一行は、病院内へと玄関ホールに足を踏み入れます。
床にはコンクリートの砕けた破片が散乱していました。
外来患者の受付でにぎわっていたであろうホールに、かつての活気は当然無く、不穏な闇だけが支配しています。
僕は恐いというよりも、気持ちが悪い、気分が悪いというのが正直な感想でした。
不規則なロウソクの明かりによって、まるで生き物のように揺らめく建物内の影。
少しでも油断すると、こちらに襲い掛かってきそうです。
と、その時です。
ガタン!!
不意に近くで大きな物音が響きました。
あまりにも、お約束な展開に何人かは思わず悲鳴をあげてしまったようです。
みんなして、(゚ω゚; 彡 ;゚ω゚)な状況でいると、前方に「ニャ~~ン」と何かがノンキな鳴き声を出しながら横切って行きました。
Yちゃん「な、なーんだ、犬かぁ(;´∀`)」
ネコだ。
どうやら、Yちゃんの混乱は早くもMAXに近づいているようです。
しかし、そんなYちゃんのアホな勘違いに、全員ピクリとも笑いません。
みんなそれぞれ余裕が無いのです。
それから、みんな早足で診察室・食堂などを次々と駆け抜け、2階に続く階段の踊場で、いったん作戦会議が開かれました。
みんなは床のホコリを払うのも忘れ、一斉に力無く腰を下ろしました。
「これからどうする?」
「どうするって・・・。」
「やっぱ・・・行く?」
『行く』が、どこを指しているのかは誰の意識のも明白でした。
今回のブリーフィングにおいて最大の山場、手術室と霊安室です。
はっきり言って1階フロアを回っただけで、すでにみんなの精神状態はマズイ方向に向かっています。
これ以上、恐怖が続けば発狂確定やも知れません。
行くとも行かないとも言わず、みんな押し黙っていると、Yちゃんが突然立ち上がって叫びました。
Yちゃん「よし!!行こうぜ!!(゚▽゚|||)」
また始まった・・・('A`)
前回のリベンジを兼ねているYちゃん、無理してヤル気を見せています。
当然みんなは・・・
「おぉ!行ってやるたい!!」
「やったろやんけ!!」
「負けるか!!(何に?)」
ビバ!単細胞。
こんな調子で、いざ出発。
目指すは強敵、手術室。
そしてラスボス、霊安室。
最初の難関、手術室は、2階フロアの中央に位置しています。
みんなロウソクの火を消さないようにゆっくりと、しかし確実に歩を進めます。
ふと気づくと、何やら僕の袖を引っ張る存在が。
Yちゃん、いつのまにか僕のそばでピッタリ張り付いていました。
Yちゃん、一番びびってますやん。('A`)
そんなYちゃんをしっかり警護しながら進んでいると、目の前に両側に開く大きな扉が現れました。
扉の上には、おなじみの『手術中』と書かれた電光プレートがありましてが、『中』の文字が割れて無くなっています。
周囲は物音一つせず、シーンと静まり返っていました。
覚悟を決めた僕ら5人は、覚悟を決めました。
身を寄せ合う男達。
みんなで一緒にドアに手をかけ、合図と同時に開ける手はずです。
「みんな、用意はいいや!?」
「いいぜ!」
「オッケー!!」
Yちゃん「(((( ;゚д゚)))アワワワワ」
『いっせーの・・・せ!!!』
みんなほとんど同時に思い切りドアを開きました。
ところが、次の瞬間!!
ドアが開かれた途端、何ともカビ臭いホコリまみれの風が勢いよく僕らの方向へ吹き込み、一瞬にして5本のロウソクの火を消し去ったではありませんか!!
Yちゃん「うぎゃぁぁぁ━(゚Д゚;)━━!!」
Yちゃんはとてつもない奇声をあげながら、なんと僕らを置き去りに自分だけ逃げてしまったのです。('A`)
霊に、というより、むしろYちゃんにビビッた僕らも叫びながら、その場を一目散に逃げ出しました。
真っ暗闇の中、所々射し込む月明かりをたよりに必至に玄関ホールを目指しました。
僕が脱出すると、すでにみんなは息を切らし座り込んでいました。
「マジあせったぁ・・・。」
「Yちゃん、シャレにならんって!」
「死ぬかと思ったぁ・・・。」
「で、・・・Yちゃんは?」
みんなはその言葉に顔を見合わせます。
「あれ?あいつどこ行った?」
「知らん!」
「車まで戻ったんかなぁ・・・?」
一番に逃げ出したYちゃんが、あまりにも高速だったため、誰一人消息を知る者はいませんでした。
恐らくフェンスを越えて車の所まで戻ったのだろうという事になり、その日の肝だめしはお開きにして、みんなも帰る事にしました。
「ったく・・・自分だけ逃げてから。」
「すごい速さやったな!」
「逃げ足は昔から速いけんねぇー。」
帰りの道すがら、Yちゃんへのヘタレ談義に花が咲きます。
今回のお話はこのへんで~・・・
とはなりません。
やはりというべきか。
笑いの神は、エンディングに最高のサプライズを用意していました。
Yちゃんの見事な逃げっぷりに盛り上がりながら帰っていると、誰かが突然叫びました。
「あ!!あれ見ろ!!」
驚いた様子で前方を指差す仲間の一人に、みんな釣られるように視線を向けると・・・
何か固まりが見えます。
よく見ると、行きがけに道をふさいでいた、あの大木の幹の前で、誰かが倒れています。
みんなは一斉に走り出し、急いでその場に駆けつけました。
正体は、もちろんYちゃんでした。('A`)
両鼻から鼻血を出し、マヌケな顔で気絶しています。
恐らく、逃げる際に全速力でこの大木に追突したと思われ、その表情からも当時の心理状態を容易に推察できます。
仲間の一人が抱きかかえ、Yちゃんのホッペを叩いています。
「おい!しっかりしろ、アホ!」
みんなの心配をよそに、Yちゃんはしばらくするとうつろな様子で意識を取り戻しました。
一同ほっと一安心。
「びっくりさせんなよ~」
「死んどるかと思った。」
「それよりYちゃん、鼻血が出とるぜ。」
その言葉にハッとするYちゃん。
Yちゃん「うぇ~血が乾いてパリパリやん!!」
そう言って笑いながら鼻の下をこすってます。
Yちゃん「鼻血、取れたぁ?」
「どれどれ・・・」
仲間の一人がそう言って、Yちゃんの顔をライターの火で照らしたその時でした!!
「お、お前・・・歯が無いぜ?」
!?
なんと、ライターの小さな明かりに照らされ笑っているYちゃんの前歯がありませんでした。
Yちゃん「え!?ちょ・・ウソ!?マジで!?ウソ!?」
一同笑死
どうやら、追突の代償は鼻血だけではなかったようであります。
その後、笑い転げるみんなをよそに、一人うろたえるYちゃん。
リベンジ失敗。
その後、数年に渡ってYちゃんのアダ名が歯抜け関連だったのは言うまでもありません。('A`)
良い子のみんな!
歯は大切にしよう!(|゚|∀|゚|)
終わり
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肝だめし②
~その②~
前回、穴に落下するという瞬間移動を披露してくれたYちゃん。
あの事件以来、地元では格好の笑いの的であります。
テレポーターの称号まで与えられる始末。
お気に入りだったクツを片方無くし、皆の笑い者にされたんでは、さすがのYちゃんも少々へコみ気味です。
しかし、そんな落ち込むYちゃんに名誉挽回のチャンスが訪れます。
再び『心霊スポット巡り』が有志によって企画されたのです。
前回の『チロリン村』では趣旨がずれてしまったため、今回は正当な肝だめしをと皆も意気揚々といった様子。
もちろんYちゃんも例外ではなく、違う意味で燃えています。
今回ミッションの対象となったのは、福岡県と佐賀県の県境の某所に位置する『廃病院』であります。
開院当時は地域医療の先端を担っていた総合病院でしたが、その繁栄もバブル崩壊の煽りを受けて終焉を迎え、現在では撤去の目途も立たないまま廃墟と化していました。
不気味にたたずむ荒れ果てた建物は、元病院という過去も手伝って次第に人が寄り付かないようになり、幽霊が出るといったウワサがたつのにもそれほど時間を要さなかったようです。
今回、その廃病院の情報を仕入れてきた仲間の話に、みんな息を飲んで耳を傾けます。
「まぁ、廃墟っつってもさ、病院の中はわりと形がそのまんま残ってるらしくてよ、手術室とか霊安室とかさ。」
手術室・・・霊安室・・・。
その無機質な響きに皆も震え上がります。
「でさ、その霊安室が最強でさ、病院で死んだ人たちの霊がウヨウヨいてよ、夜中になったら騒ぐらしいんだよ、助けてぇーとかなんとか・・・。」
Yちゃん「うわぁぁぁぁ!!((((*゚Д゚;))))」
「テレポーター、声でかすぎ!」
『チロリン村』での一件以来、お化けにとても敏感なYちゃん。
こんな調子でリベンジは大丈夫なんでしょうか?
しかし、恐がっているのは決してYちゃんだけではありません。
ただでさえ普段から近寄り難い場所であるのに、ほぼ形を残したまま廃墟となった病院なんて誰が好き好んで行くんでしょう?
アホとしか言いようがありません。(;´Д`)
これが若さか・・・?
~それからそれから~
今日はとうとう決行の日。
僕も朝から気合いを入れ、夜に備えました。
待ち合わせの時間は午前1時。
ちょうど草木も眠る丑三つ時に現地スタート出来るよう、粋な時間設定であります。
いつもの仲間が全員揃ったところで、いざ出発。
約1時間の道のりです。
車内では、仲間の一人が今回の旅を盛り上げるべく素敵なアイテムを用意してくれていました。
「じゃーん!!」
彼が得意げにみせたのは5本のロウソクでした。
「これ人数分あるからさ!みんなで火点けて探検しようぜ!!」
「あ、ありがとう・・・(´Д`lll)」
みんな、あまりにも嬉しすぎて、顔が笑ってません。
ロウソクの火を灯しながら、深夜の廃病院探索。
素敵な夜になりそうです。
現地に着いた頃には、すでに午前2時を回っていました。
「なんか、いかにもって感じやなぁ・・・。」
誰かの言葉にみんな無言でうなずきます。
到着といっても正面に車を乗りつけたわけではなく、閉鎖された病院は周囲をぐるりと金網で囲まれており、唯一の進入経路は誰かが穴を開けた一箇所のみでした。
付近は草木が生い茂り、車で入れるのはここまでなのです。
車内ではすでにロウソクの使用が取り決められていましたので、みんな各自持参した懐中電灯は車に置いていきます。
「これ、火を点けてもすぐ消えたりしないかなぁ・・・?」
誰かが心配そうなか細い声をあげましたが、その日は不思議とまったくの無風状態でしたので、なんとかロウソクの心細い明かりでも問題無さそうでした。
消えたらまた点ければいいという事で、さっそくみんなで金網の穴へと侵入開始であります。
金網を越えた先には両側を身の丈ほどもある樹木がひしめく一本道。
例え5人分の明かりを合わせたとしても、ロウソクの火は僕らの足元を照らすのがやっとでした。
眼前に広がるのは不気味な闇だけ。
本当に廃病院などあるのだろうかと、皆一様に不安げな様子。
ロウソクの不安定な光が、ゆらゆらとそれぞれの顔を照らし出しています。
と、その時、Yちゃんがいきなり大きな叫び声をあげました。
「あ!!((((*゚Д゚;))))」
みんな一斉に凍り付き、恐怖の表情を浮かべます。
よく見てみると、目の前にかなり大きな大木が折り重なるようにして進路をふさいでいました。
「お、お前、大きな声出すなよ!!」
「ビックリしたやんか!!」
「おいおい、頼むぜ!」
みんなの反感に、気合いの掛け声と必至に言い訳を繰り返すYちゃん。
テレポーター健在であります。
かすかに笑いも起こり、少しだけ場がなごみましたが、病院を前にしてトラブル発生には変わりありません。
不自然なほどに太くしっかりとした幹を横倒しにして、まるで僕らの侵入を拒んでいるような気配さえ感じさせます。
しかし、ここまで来て引き返すなどもってのほか。
先に進めないかと検索した結果、大木の重なった一箇所に人一人通れるようなスペースが見つかり、なんとか続行する事が出来ました。
大木の通貨した後、今回の情報を持ってきた一人が浮かない表情で言います。
「オレが聞いた時は、あんな大きな木が倒れてるなんて言ってなかったんだけどなぁ・・・。」
かすかに震えるその声に、誰も答えようとはしませんでした。
それっきり無言のまましばらく進むと、狭かった道幅がだんだんと広がり始め、一行はとうとう廃病院の正面までたどり着いたのです。
「・・・・・・。(;´Д`)」
感動のゴール!とはいきませんでした。
恐怖におののく子供たち。
誰一人として、声を出す者はいませんでした。
さっきまで無風だったはずの風は、体にまとわり付くように生暖かい流れを取り戻し、ロウソクの火を静かに揺らしています。
このただならぬ雰囲気を、全員が同時に感じ取ったようでした。
壁には血が乾いたような真っ黒なシミがいたるところに尾を伸ばし、窓ガラスはほぼすべてに渡って割れていて、破れかけたたどす黒いカーテンが力なく垂れ下がっています。
屋上にかけて、3分の1ほどの部屋が瓦礫と化し、ベッドや棚などが無造作に転がっているのが地上からも月明かりで確認出来ました。
恐度は『チロリン村』の比ではありません。
みんな、あまりの恐ろしさに、足が固まってしましました。
「マ、マジでここ入るわけ・・・?」
「これはちょっとヤバ過ぎるんじゃないか!?」
「シャレにならん・・・。」
Yちゃん「もしかして・・・びびってんの?(|゚|∀|゚|)」
Yちゃんよせばいいものを、前回の失敗がよほど悔しかったのか、冷や汗を浮かべているくせに、みんなをあおっています。
「びびるか!!」
「行ったろやんか!!」
「お前、この前消えたくせに!!」
Yちゃん「ぐっ・・・!(*゚Д`;)」
かくして、戦慄の廃病院ツアーが幕を開けたのでした・・・('A`)
つづく
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肝だめし①
あんなに暑かった夏も、お盆を過ぎたあたりから、時折涼しげな風に乗って秋の気配を運んで来る様な福岡の今日この頃ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
中には、忘れられない思い出を作られた方もいらっしゃるかも知れません。
もちろん、僕にも忘れられない夏の思い出があります。
それは、『肝だめし』です。
柳の陰から貞子がゆらり・・・なんてのも、お化け屋敷ではありがちですが、僕のケースはそんな生易しいもんじゃございません。
『ガチ・心霊スポット巡り』であります。
女の子の「キャー!恐ぁーい!」なんて甘えた声などとは無縁の、男たちによる、男たちのためのマジ根性試し。
漆黒の闇の中、祟りや呪いなどオカルトないかなる障壁があろうとも、男たちは突き進むのみ。
そこに霊がいる限り。
なんともバチ当たりな企画でありますが、ドライブの理由に貪欲な、ちょうど自動車の運転免許を取得したばかりの19歳たちには格好のミッションだったわけです。
しかし、そこは当然、僕を含めたアホ軍団。
ただじゃ終わりません。
ある意味、霊の存在よりショッキングな体験の数々・・・。
さぁ、バカワールドへどうぞ。
~その①~
その日は昼間から、どんよりとした雲が厚く空を塗りつぶし、生暖かい風が全身の毛を舐めるように通り抜ける不気味な日でした。
不穏なたたずまいの街の雰囲気に一抹の不安を感じつつも、以前から兼ねてより予定されていた、『某廃墟訪問の旅』決行の深夜に向け、僕は気合いを入れなおしていました。
ここ最近の僕ら地元連中は、念願の免許を手に入れ毎晩のように深夜のドライブを敢行していたわけですが、ただあても無く車を走らせているだけでは次第に飽きが来るという事で、いつのまにか不気味なスポットを各自探して来ては、仲間内で訪問しておりました。
今夜向かうその廃墟も、仲間の誰かが人伝いに聞いた場所でして、廃棄され現在は廃屋になってしまった、そのいかにもというレストランに、みんな胸を踊らせておりました。
僕は目が踊ってましたが。
いつものように親が寝静まったころ、そっと玄関から抜け出し、家の前で迎えの車を待ちます。
タバコを吹かしながらしばらく待っていると、遠くからアメ車の様なエキゾーストヒートを響かせて、友人の日産ローレルがやってきます。
さっそく車内に乗り込み、道中しばし各自が気合い度談義であります。
「廃墟?楽勝やろ!」
「ただの潰れたレストランだしね!」
「そうそう!幽霊なんてねぇ笑」
「ハハハ、オレ、数珠持ってきたしね!」
などとのたまい、若干ビビりを匂わせているのは、香ばしさでは群を抜いていたYちゃんです。
このYちゃん、頻繁にアホ発言・行動を繰り返し、周囲を爆笑の渦に巻き込んでいた素敵なヤツなんですが、学力は抜群に良く、高校は地元でも有名な進学校で、後に国立大に進むという偉業を成し遂げる事になります。
要は、頭はいいが、知恵がない。
そんな彼が、心霊スポットに赴いて事件が起こらないはずがないのです。
一向が向かうは、地元の走り屋の間でドリフトポイントとして有名な三瀬峠という山道沿いの一角にたたずむ不気味な廃レストラン。
通称『チロリン村』
なぜこんな名称になったのかは未だに知りませんが、僕ら地元の人間ならば、かの『犬鳴き峠』クラスにも肩を並べるメジャーな心霊スポットでした。
何でも、この『チロリン村』には地下へ通ずる階段があり、それを降り切った先の扉を開くと・・・
出るらしいという噂でした。
程なくして、目的の『チロリン村』に到着。
辺りはうっそうと草木が生い茂り、朽ち果てたボロボロの建物が闇とともに横たわっていました。
びびる一向。
「うわぁ・・・マジ恐い・・・。」
「これがウワサの・・・。」
「マジでなんか居そうやなぁ・・・。」
Yちゃん「え!?猫とか!?」
Yちゃん、目的を分かっているのでしょうか?
いまいち空気の読めていないYちゃんを尻目に、みんなはさっそく持ってきた懐中電灯を手に、『チロリン村』の正面に整列します。
「いいや?びびったヤツ負けね!」
負けの定義がこれほど分かりにくい戦いもありませんが、そこは待った無しのローカルテイスト。
皆、一様に真剣です。
「誰がびびるかよ!!」
「かかって来いやぁ!」
Yちゃん「数珠が無い!!?」
護身用に携帯していた数珠を無くしたとうろたえるYちゃん。
勝負はもうついているような・・・(;´Д`)
しかし、まさかこれが、その後Yちゃんに襲いかかる悪夢の前兆だったとは誰も気づいていませんでした・・・。
僕を含めた4人は、身を寄せ合うようにしっかりと固まり、ゆっくりと『チロリン村』へと進入を開始しました。
庭内にはなぜか数台の原型を留めていない車が横たわり、まるで僕らを室内へと手招きしているようです。
腐りきった壁や天井には大小無数の落書きが広がっています。
書いてある内容は、取るに足らないくだらない文言ばかりでしたが、時より懐中電灯の限られた光に照らされ不気味に映っていました。
もはやレストランの面影はそこには無く、ただただ荒れ果てた廃屋に、一同緊張を隠せません。
「うわぁ・・・きっついなぁ・・・。」
「なんか今にも出そうやなぁ・・・。」
「やべぇ・・・これはヤバイって・・・。」
Yちゃん「なんか右肩が重い・・・。」
Yちゃんの発言に、皆いっせいに凍りつきます。
「お前!シャレにならんって!」
「マジでやめろって・・・!」
「肩こりって事にしとけって!(*゚Д`;)」
極限状態の中、突然のYちゃんの燃料投下に皆の動揺は一気に頂点まで昇りつめます。
さっきの勝負はどうなったんでしょう?
Yちゃんの優勝でしょうか。
一同しばらく石化していましたが、なんとか探索を再開。
1階付近は一通り巡回を終え、一時の達成感に安堵の様子。
「ふぅ・・まぁ楽勝やったな!」
「やっぱ幽霊なんておらんって!」
「そうそう!ハハハ!」
Yちゃん「なんか右肩が・・・。」
3人→(((( ;゚д゚)))
「お前!またそんな事言って!」
「わざとか!?わざとなのか!?」
「あぁ、あ、あれたい!漢字の書きすぎたい!」
Yちゃんの発言に、いたく混乱する子供たち。
いったん外に出ようとなり、作戦会議です。
「ねぇ・・・アレ、どうする?」
「アレ、かぁ・・・。」
「うーん・・・アレ、ねぇ・・・。」
Yちゃん「あら!?右肩治った!」
3人「はぁ・・・。(;´Д`)」
みんなが言う『アレ』とは、さきに述べた『チロリン村』最大の暗部、『地下への階段』であります。
ここを進まずして、『チロリン村』は語れない、地下室へ行かないなら『チロリン村』へ行った事にはならないのです。
4人は白熱した議論を重ねた結果、やはり地下は避けられないという事になり、いよいよ最終局面へと展開を迎えます。
「でも大丈夫かなぁ・・・。」
「ここからはシャレでは済まんけんねぇ・・・。」
「もしホントに居たら・・・。」
Yちゃん「幽霊おったらウケるね!(゚∀゚)」
Yちゃん、忌々しい右肩の違和感が取れ、何気に浮かれております。
「なら、お前が先頭に行けよ!!(; ̄□ ̄)」
誰かの煽りにも何食わぬ顔で「いいよ!」とYちゃん。
今日はなんだか輝いて見えます。
そんなこんなで、一同はYちゃんを先頭にとうとう地下への階段に。
入り口にも増して、たくさんの生い茂る草木をかき分け、階段の前までやってきました。
暗黒の闇に誘うように、地下への階段は大きな口を広げています。
みんなは決心を固めました。
「よし!行こう!!」
Yちゃん、いつもの香りはみじんも感じさせません。
彼は『恐怖』という感情を忘れてしまったように、雄弁に歩を進めています。
どうやら真の優勝者は、やはりこの男だったようです。
水曜スペシャルの川口隊長も真っ青であります。
と、その時でした。
Yちゃん「あっ!?」
Yちゃんの悲鳴にも似た叫び声の瞬間、彼の姿は忽然と僕らの前から消え失せてしまったのです!!
驚く3人。(゚ω゚; 彡 ;゚ω゚)
「おらんごとなった(消えてしまった)!?」
誰かが悲痛に叫びます。
混乱と動揺は、次第に極度の恐怖となって3人を包み込みはじめます。
「ど、ど、どうなった今!?」
「え!?なんで!?」
「き・・消えた・・・。」
やはり祟りが起こったのでしょうか!?
面白半分に眠りを邪魔された霊の怒りを買ってしまったのか!?
「うそやろ!?あいつどこ行った!?」
「バチが当たったんや!バチやぁぁ!!」
「Yちゃぁぁぁん!!」
Yちゃん「はぁーい!(*`Д´)」
3人は思わず顔を見合わせました。
消えてしまったはずのYちゃんの返事がどこからか聞こえたのです。
もしや、霊界へと旅立ってしまった自分と道連れに、僕らを逃がすまいと引きずり込もうとしているのか!?
戦慄が駆け抜けます。
「うぉぉぉぉ!!?」
「ひゃぁぁぁ!!?」
「ゆゆゆ、許してくれぇぇ!!」
3人は恐怖のあまり、もうどうしていいかわからずただただ叫ぶばかりです。
Yちゃん・・・あなたはもう僕らとは違う異世界の人・・・。
アーカイブ星で元気にお達者で・・・
Yちゃん「ざけんなゴルァ!(*`Д´)」
え!?(゚Д゚)
Yちゃん「下!下!したぁぁぁ!!(`Д´)」
しきりに『下』と叫ぶ過去の人。
3人は聞こえるまま、恐る恐るYちゃんが消えた場所の足元を覗き込みました。
すると・・・
Yちゃん「はよ助けてくれぇー!」
穴の開いた階段の下でYちゃんが悶絶してました。
穴に落ちたんですね、Yちゃん。('A`)
何かの木材にハマッているYちゃんを3人で救出。
泥だらけになってしまったYちゃんは、クツを片方無くしたと何度も叫んでいました。
もちろん帰りの車中、話題は終始Yちゃんの落下騒ぎに花が咲き、
幽霊話なんてどこへやら...。
まぁ、ケガも無く無事に帰って来たYちゃんでしたが、今回の出来事はほんの序章に過ぎなかったのです・・・。
つづく
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体育祭の怪
みなさんには体育祭に、どんな思い出がありますか?
汗だくになりながらも、クラスメートと協力し合ったり、時には他チームの生徒と競い合ったり。
一口に『体育祭』と言っても色んな競技があり、それぞれ大いに盛り上がる事と思います。
もちろん、僕が通った高校も必要以上に盛り上がりを毎年見せていました。
その理由は以前にも書いた んですが、僕らの学校は男子比率に対して、
女子0.09%という変わった共学でしたので、それはもう体育祭なんか超軍隊ノリなわけなんです。
僕は普通科に属していましたが、工業科の生徒さんらは日ごろ溜まりに溜まった何かを発散すべく、オリから脱走したナウマン象の様に、とてつもなくハッスルするのです。
クラスマッチの柔道大会なんか、毎回骨折などの重傷者が普通科から続出するので、僕らは柔道の授業では、投げる練習ではなく、
投げられる練習という面白い指導をみっちり仕込まれたものです。
おかげで、その年の大会ではあちらこちらで投げの見本のようにキレイな技が炸裂しておりました。
当然、クラスマッチごときでこれだけのテンションですから、規模の大きな体育祭ともなると、工業科の方々の精神状態は容易に想像出来るというものです。
○普段より、その鬼度を増したソリコミ
○学校のジャージの背中に描かれた昇り竜(ウナギ犬似)
○当日の為だけに乗り付けた、マンション駐車場に隠された原付
恐ろしい興奮ぶりです。
前述した通り、当校のバカっぷりが露呈される一大イベントが幕を開けたのですが、僕らが3年生の年、問題の体育祭で事件が起こりました。
歴史的事件です。
以下に詳細を記します。
その年の体育祭、執行部の粋な計らいで、ある種目が試験的に導入されました。
その名も『ブロック選抜リフティング競技』
※概要
Jリーグ元年でもあった1993年、にわかにサッカー熱が日本中を席巻しようとしていた世論の後押しを受け、執行部が体育祭に投入した地雷的競技。ただひたすらリフティングの連続回数を競うという、ある意味職人気質を要する地味な戦い。またはその有り様。
騎馬戦やブロック対抗リレーなどの花形競技を相手に、まるで身を潜める様に静かに大会プログラムに組み込まれた謎の戦い。
現時点で内容未知数のこの競技に誰しもマユをひそめました。
しかし生徒たちは僕を含め、その隠されたポテンシャルに気付いてはいませんでした。
まさに、神のみぞ知る恐ろしい事態を招く事になろうとは.....。
いつもの校長の長い挨拶の後、大会は滞りなく始まりました。
予想通り、工業科の皆さんは血気盛んといった様子です。
僕の所属する普通科大隊白ブロック。
同じく普通科の生徒のみで結成された青・黄色ブロック。
そしてコマンドー機械化部隊の赤ブロック
大方の予想通り、現在までの得点数は白・青・黄が横並びに対して、赤がダントツの1位。
例年通り、誰もがこのまま工業科率いる赤ブロックの独走優勝と信じて疑いませんでした。
体育祭ブロック優勝は、長年のあいだ工業科のみなさんが守ってきた伝統だったのです。
ところが!!
事態は急転直下の様相を見せます。
そうです、次の競技である、あの『ブロック選抜リフティング戦』が始まろうとしていたのです・・・。
目を閉じれば、数週間前に話し合われたブロック別の競技出場選手の決定集会を思い出します。
他の競技に出場する選手が順調に決まっていくなか、なかなか決まらない『リフティング戦』。
未知の種目であり、個人戦というプレッシャー必至の状況を前に、誰も希望者がいません。
ブロック長が業を煮やし、クジ引きで決めようと提起した矢先、一つの勇気ある手が高々と挙がりました。
どよめきの中みんなの視線の先に映ったのは、一人の小柄な少年でした。
ブロック長の、「やってくれるか!?」の問いに元気良く答えるのは、つい最近まで中学生だったまだあどけなさの残る1年生の田中くん(仮名)でした。
3度のメシよりサッカーが好きだというにも関わらず、本校にサッカー部が無い事を入学後に知ったという若干香ばしい田中くん(仮名)
しかし、あなどる事無かれ、何かの大会で2位という輝かしい実力の持ち主であります。
この時、皆一様に、早めに『リフティング戦』の選手が決まって良かったなどと安堵していましたが、この田中くん(仮名)を選抜したことが、後に起こる悲劇を招こうとは誰が気付いたでしょう・・・。
目の前に、各ブロックを代表するリフティング要因が居並びます。
運営席より、今大会初めての競技という旨が説明されると、選手たちは1歩前に踏み出し、サッカーボールを用意しました。
ボールを手に持つ者、地面に置いて待機する者、それぞれがスタートに備えます。
田中くん(仮名)はどうでしょう?
頭にボールを乗せたままスタートを待ってます。
ヤル気満々です。
「よーい、スタート!!」
大きな掛け声とともに、いよいよ競技スタートです。
各代表の4人、いずれも軽快なスタートと思いきや、青・黄の2人は早々と落球してしまい戦列を離脱。
赤の代表のゴツイ選手はなんとか健闘していますが、バランスが悪いのか、左に右にとボールが暴れていつ落球してもおかしくありません。
それにくらべて田中くん(仮名)の凄さと言ったら!
CMハウスバーモントカレーの小野選手も真っ青の妙技を次々に繰り出しております。
時には両足を交互に、時には頭のテッペンでボールを止めたり、そのまま首の後ろに移動させたりと、
まさに『リフティングの申し子』と言わんばかりの華麗な球さばきを披露しています。
会場に居合わせた人々が驚きの表情を見せる中、突然アナウンスの声が場内に響きました。
「リフティング回数をそのまま得点とします」
えぇぇぇぇぇ!?(゚ω゚; 彡 ;゚ω゚)
場内、割れんばかりの歓声(一部悲鳴)
さぁ、大変な事態になってまいりました。
この時、初めてみんなは気付いたのです、この競技の恐ろしさを。
回数=得点→回数によっては大量得点
この無謀とも言える取り決めを選手が事前に知っていたかどうかは分かりませんが、アナウンス直後、赤の選手は動揺したのか落球してしまい、大地を殴打しながら悔しがっていました。
と同時に、フィールドは残された田中くん(仮名)の一人舞台。
一向に落球の気配はありません。
それどころか、技の多彩さが増えた感さえあります。
よく考えてみると、選手決めの際、誰かの推薦、もしくは指名などを受けたわけではなく、彼は自分の意思で立候補したのです。
選手に決定した時の、あの笑顔・・・。
田中くん(仮名)・・・あきらかに目立ちたがり屋です。
なんという事でしょう。
彼はむしろ、この大舞台を楽しんでいるのです。
自分の得意なこの『リフティング』という手段を使って、自己表現の頂点に登りつめようという魂胆なのです。
次第に増えていく得点・・・。
ふと、赤ブロックの方に目をやると、
殺意にも似た怒りのオーラを臨界点突破の勢いで放出する子供たちの姿が!!(((( ;゚д゚)))
そんな事はお構いなしといった様子で、田中少年は得点を積み重ねてゆきます。
もう、彼の姿が日向小次郎に見えてきました。
まだ大会前半にも関わらず、もしこのまま大量得点でもされた日には、白ブロックの優勝当確という事態を招いてしまいます。
そうなれば当然、怒りに燃えた赤ブロックの子供たちが黙っているはずはありません。
血の大会2日目が始まってしまいます。
そうした緊急事態を避けるべく、白ブロックは団長以下一丸となって田中少年に叫びます。
「おーい!もうやめてくれー!!」
そんな悲鳴にも似た白ブロックのみんなの叫びに、田中くん(仮名)、
笑顔でうなずいてます。
さすが田中くん、ただのバカじゃございません、
歓声と勘違いしております。
かくして、異様な熱気と興奮に満ちた『ブロック選抜リフティング戦』は、田中(仮名)選手の疲労による落球で幕を閉じました。
青・・・・・・・・15点
黄・・・・・・・・23点
赤・・・・・・・・57点
白・・・・・・・・987点 (´Д`lll)
白ブロック 優勝
大会は午後の種目を残して、優勝ブロックが決定してしまうという前代未聞の結果となりました。
ブロック長が泣いていました。
違う意味で。
その後、田中くん(仮名)がどうなったかは知りませんが、それ以来僕は学校で見た事はありません。
みなさんも体育祭は楽しくハッスルしましょうねぇ
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